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受験勉強とその先にあるもの

最後の追い込みの大切な時期です。

その中でもしかしたら、焦りやプレッシャーから自分を見失ってしまう人もいるかもしれません。

少々長めですが、以下の文章で初心を思い出し、また、自分が今やっていることの意味を確認できるかもしれません…

 

  受験勉強の意味とその先にあるもの

 

 受験勉強とは、あらためて言うまでもなく志望校に合格するためのもの。受験予備校として、私たちはそのことを常に心に留めています。「合格したい」という皆さんの憧れや願いを何とか叶えてもらいたいと、私たちもその使命を果たすべく、日々、努力、研究しています。それを前提として、受験勉強の持つ意味とその広がりをこれから少し考えてみたいと思います。

 美大受験といっても、特別な天才を発掘する試験ではありません。美術やデザインが好きなふつうの人が、真剣に勉強して身につけた後天的な実力やセンスで対応できるものです。また、この世界が「カン」や「ひらめき」など、感覚だけの世界のように思われがちですが、実際の仕事の現場は、一般に思われている以上に論理的で地道な作業の繰り返しです。特にデザインの各分野は、広く社会に開かれている性質上、一般的な常識や知識も必要とされます。

 受験勉強の過程では、実技の技術以外にも様々なことを学びます。ものごとの見方、とらえ方、考え方、そしてそれを他者に伝える様々な方法・・・。それらは地道な努力によって積み重なっていくもので、そこで身につけたものは大学に入ってからも必要とされます。絵を描いたり、造形したりする総合的な力、そこで得た知識・経験は、一生を通じてあなたの大きな財産となっていくはずだと私たちは信じています。

 大学に入ってからは、「どういうテーマで、何を表現していきたいのか、どう活動していくか」を見出していくことがとても大切になってきます。受験勉強では、与えられた課題をキチンとこなす力がまず求められますが、自分で問題やテーマを発見して展開させていく力、つまり「発想力」や「構想力」も求められます。美術大学は、受験術だけに長けた人よりも、実はそのような力を持っている人や、その可能性を感じる人材を求めています。要は、卒業後の仕事や活動を視野に入れた「自分自身のテーマ探し」です。その原動力を得るために、まず大学の4年間があり、現在の受験勉強もそれと地続きなのだと認識してほしいのです。

 現在は様々なテクノロジーが私たちの生活を便利にしてくれています。インターネットは情報を瞬時に提供してくれます。しかし、効率の良さや便利さは人々から考えることを奪う恐れがあります。これはとても恐ろしいことだと思います。美術やデザインの道へ進む皆さんたちは、このことを自覚しておくべきだと思います。美術やデザインの勉強の過程では、本来の目的とは直接関係ないような体験や、少し遠回りに思えるアプローチが、アイディアを練ったり自分のテーマ探しに有効だったりすることが結構あるのです。一見無駄に見える作業や直接関係ないような作業や事柄の中にヒントが転がっていることがしばしばあります。

 世の中に、表現するためのテーマというのは無数にあります。尽きることはありません。それに気づける人が表現者になれるのでしょう。一歩街に出れば、歩くたびにテーマが見つかるはずです。十代の今だから感じられること、今でしか見つけられないことがあるはずです。たとえ些細なことであっても、面白いな、興味深いなと心から感じられるテーマがあれば、それを大切にして欲しいと思います。ふだんの与えられた課題プラス自分のテーマの追求、それを少しずつ持続していけば受験勉強や制作の励みになっていくことでしょう。

 将来、仕事として活動を始めると、ファインアート系などの創作活動は孤独なものに感じられることがあります。でも、実はその孤独や不安が自分自身を深く見つめる契機となり、その過程で作り手としての真の宝を見つけることがしばしばあります。一方、デザイン系は多くの場面でチームワークが求められるので、単なる独りよがりでは仕事になりません。他人とのコミュニケーションが重要です。違いはありますが、ファインアート系もデザイン系も自分なりの意見やテーマを持っていなければならないのは同じです。また現在、様々な分野でボーダーレスな考え方が広がりつつあり、美術やデザインの分野でもファインアート系とデザイン系を分けて考えない作り手も増えつつあります。

  現在の私たちの世界は、(極端にいうと)あらゆる営みが関係し合っています。心の底で、もやもやした気持ちは誰でもありますが、それを色と形と素材でどう表現するか、どうアイディアを出すかを競って絵やデザインは成立します。自分にしか興味のない人もいるようですが、これは悲しいことです。自分というのは他人や環境、時代などとの関係の中でつくられます。逆説的に言えば、徹底的に自分のことを考えると世界がわかり、世界を知ろうとすればするほど自分のことがわかります。例えば、新聞に眼を通すときも、全部自分に関係があると思って読んでみると世界の捉え方が変わるはずです。

「自分探し」という言葉をよく耳にしますが、それはどこかに転がっていて、いつか自然に見つかるものではありません。自分らしさとは、「自分づくり」をして初めて生まれるものではないでしょうか。

 すでに本格的に受験勉強を始めている人、これから始めようとしている人、迷っている人・・・私たちは、皆さんがこれから取り組む勉強を、将来への広がりも踏まえながら丁寧にお手伝いし、応援していくつもりです。皆さんの合格を願っています。一緒に頑張りましょう。

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